Windows 10上でIntel Smart Response Technologyが使えるかどうかの情報があまりに少ないため、実機を使って調べてみました。
なお、本ページの記述内容の適用に際してはご自身の責任においてお願いします。
NEC PC-LL850MSBをWindows 10にアップグレードする際、NECの手順通りに行うと、Intel Smart Response Technologyを無効にすることになり、結果としてWindows 10でのディスク読み込みパフォーマンスがWindows 8.1Updateより極端に低くなります。これは、起動時、アプリケーション立ち上げ時など、多くの場面で体感できるほどです。
PC-LL850MSBのスペックの一部を抜粋します。
Windows 8.1Updateでのディスク読み込みパフォーマンスはCrystalDiskMark(以下同様)でシーケンシャルリード347MB/s/ランダムリード200MB/sぐらいあります。デフォルトはenhanced(拡張) modeのようで、writeは早くありません。
NECの手順でWindows 10にアップグレードするとシーケンシャルリード100MB/s/ランダムリード1MB/sぐらいしかでません。これはIntel SRTを無効にしているので当然で、ほぼHDDのパフォーマンスと同様です。
このままのパフォーマンスは許容できないので、Windows 10でもIntel SRTを有効にしてみました。
具体的には、Windows 10 Homeへのアップグレードを以下の2通りの方法で(クリーンインストールではなく)アップグレードインストールを実施しました。
結果から言えば、どちらの方法でもIntel SRTが使用でき、パフォーマンスもアップグレード前と同等(以上)となりました。1.の方法でも2.の方法でもシーケンシャルリード400MB/s/ランダムリード200MB/sぐらいとなり、パフォーマンスに差はありませんでした。
現在、2.の方法でバージョンアップ後、しばらく使用していますが、特に不具合は発生していません。
以下は備考です。今回の件を行うにあたって分かったことなどです。
Windows上のデバイスドライバーの名称は、記憶域コントローラーの「Intel(R) Mobile Express Chipset SATA RAID Controller」(バージョン12.0.0.1082)または、「Intel Mobile Express Chipset SATA RAID Controller」(バージョン14.8.0.1042)です。
BIOSにもIntel(R) RST SATA Driverがあり、バージョンは12.0.0.1783です。これはWindows上のデバイスドライバーを更新しても変化ありません。
1.の方法でWindows 10にアップグレードする場合、Intel RSTのGUIはインストールする必要はなく、デバイスドライバーだけアップデートすれば機能します。
NEC提供デバイスドライバーは、C:\DRV\IRST\にありますが、このフォルダのInstallRST.batを使用してGUIのインストールを行うと、使用できるモードはenhanced(拡張) modeのみとなり、maximized(最速) modeが選択できなくなります。これは、バッチファイルの中でレジストリの設定を行っているためです。
Windows 8リカバリー直後も、maximized modeは無効になっています。(そのよ うにレジストリの設定がされています。)
2.の方法において、Intel SRTの無効化はBIOSから行います。(標準ではIntel Rapid Storage TechnologyのGUIがインストールされていないため。)この手順は下記の通りです。
Intel(R) RST 12.0.0.1783 SATA Driver
RAID Volumes:
DISK ID 0, RAID0(Stripe), 931.5GB, Normal
Volume_0000, RAID0(Cache), 29.8GB, Normal
Remove disk/volume Acceleration?
ALL UNSYNCHED DATA WILL BE LOST!
Yes
No
Intel(R) RST 12.0.0.1783 SATA Driver
RAID Volumes:
Volume_0000, RAID0(Cache), 29.8GB, Normal
Non-RAID Physical Disks:
Port 0, WDC WD10JPVX-08JC3T2 WD-WX91E13UPC17, 931.5GB
Delete the RAID volume?
ALL DATA ON VOLUME WILL BE LOST!
Yes
No
Intel(R) RST 12.0.0.1783 SATA Driver
Non-RAID Physical Disks:
Port 0, WDC WD10JPVX-08JC3T2 WD-WX91E13UPC17, 931.5GB
Port 1, SAMSUNG MZMPC032HBCD-000L1 S0Y2NYAD402378, 29.8GB
2.の方法において、Intel SRTの有効化はIntel RSTのGUIから行います。(BIOSからは有効にできません。)この手順は下記の通りです。
作業完了後、GUI上で一目でRAIDが組まれていることが分かります。BIOSで確認しても、RAIDが組まれていることが分かります。
NEC提供のデバイスドライバー12.0.0.1082をWindows 10で使用しても、私が試した範囲では、OSが起動しなかったり、クラッシュすることはありませんでした。しかし、パフォーマンスがIntel SRTを無効にした場合とほとんど同等と、全く出ませんでした。
私の環境の問題かもしれませんが、2.の方法でIntel SRTを無効にした後の再起動後、キーボードとトラックパッドを認識しなくなりました。PC-LL850MSBはタッチ液晶のモデルなので、タッチ液晶で操作してデバイスマネージャーを開いてキーボード(NEC Note Keyboard with One-touch start buttons)とトラックパッド(NX PAD (for Wide))の状態を確認したところ、いずれも「!」マークがついており、正常に動作していないようでした。このため、キーボードのデバイスドライバーを削除して、再起動したところドライバーは標準キーボードのものになりましたが、キーボード/トラックパッドとも使えるようになりました。
NECから、Windows 10用のキーボードドライバーが提供されているので、Windows 10アップグレード後、このドライバーを適用したところデバイスも「NEC Note Keyboard with One-touch start buttons」に戻り、キーボード/トラックパッドとも問題なく使用できています。